うどんの「コシ」とは? 硬さだけではない弾力、グルテン・塩・足踏み・ゆでたての水分の差が生む食感
公開 文: Katsunori

うどんを食べて「コシがある」と言うとき、何を感じているのでしょうか。硬いうどんのことだと思われがちですが、コシは硬さだけではありません。硬さと弾力の組み合わせです。
この記事では、大学の研究、製粉会社、香川県、農林水産省の資料をもとに、うどんのコシとは何か、どうやって生まれるのかを紹介します。
コシは「硬さ」と「弾力」の組み合わせ
研究での定義
香川大学農学部の三木英三さんの論文「うどんのテクスチャー」(日本バイオレオロジー学会誌、2006 年)は、ゆでたうどんの品質を主に決めるのは、コシ(硬さと弾力)、歯切れ、なめらかさだとしています。英文の要旨では、コシを「hardness and springiness」、つまり硬さと弾力の組み合わせとして説明しています。
「押し返す」弾力
農林水産省の広報誌「aff」は、讃岐うどんを「かめば歯を押し戻す適度な弾力を備えた太めの麺」と紹介しています(2016 年 11 月号)。水沢うどんについても、「かみしめれば適度に跳ね返す弾力を備えている」と書いています(2016 年 10 月号)。
硬いだけのうどんは、コシではない
香川の製粉会社、木下製粉は、コシを「軟らかいけれども噛み切ろうとすると力がいるうどん」と説明しています。そのうえで、硬いだけのうどんや、ゆで足りないうどんを、コシがあると勘違いしているケースもある、と書いています。讃岐うどんでよく言われる「軟らかい中にもコシがある」という、一見矛盾した表現は、このことを指しています。
コシを生むしくみ
小麦のたんぱく質が作る「グルテン」
コシのもとになるのは、小麦粉に含まれるたんぱく質です。東京農業大学の中西載慶さんは教員コラムで、小麦粉には弾力性をもつ「グルテニン」と、柔らかく伸びやすい「グリアジン」という 2 つのたんぱく質が含まれていて、水を加えてよく練ると、両方の性質をあわせ持つ「グルテン」ができる、と説明しています。
香川県は、グルテンを次のようにたとえています。
この網目状の構造が建物の鉄骨のような役割をはたし、うどんならではのコシとなります。
塩は、グルテンを作りやすくする
うどんの生地には塩を加えます。日清製粉グループは、塩を加えるのは小麦粉のグルテンの形成をより促進させるためで、グルテンがうどんに独特のコシを与える、と説明しています。ただし、塩を入れすぎると生地が固くなりすぎることもあるそうです。
香川県は、季節によって塩と水の量を変えるよう案内しています。夏は生地がだれやすいので、塩を多く、水を少なくします。
足踏みと寝かせ
香川県観光協会の「うどん県旅ネット」は、讃岐うどんの作り方を「こねる、踏む、ねかせる、延ばす、切る、ゆでる」と紹介し、特にしっかり「踏む」ことで、コシのあるうどんができると書いています。
日清製粉グループの作り方では、生地をまとめたら常温で 30 分以上ねかせて熟成させます。生地がなじみ、表面がなめらかになります。

ゆでたての外側と内側の「水分の差」
コシには、もうひとつ大事な要素があります。ゆで上げた直後の麺の、外側と内側の水分の差です。木下製粉は、こう説明しています。
茹であげ直後のうどんは、中心部分の水分が約 50% であるのに対し、外側部分は約 80% になっています。この水分の差により、最初噛んだときには、軟らかいけれど、内側は硬く、その差がうどんのコシとなって感じるわけです。
外側はやわらかく、内側は硬い。この差が「軟らかいのにコシがある」食感を生みます。
時間がたつと、コシは消える
同じ説明によると、ゆでて時間がたつと、外側から内側へ水分が移り、全体の水分が均一になります。どこも同じやわらかさになるので、歯ごたえがなくなります。これが「うどんがのびた」状態です。木下製粉は、ゆでて 30 分もたつと、ゆで上げ直後のコシはなくなる、と書いています。
ゆでたてのうどんを出す店のうどんにコシを感じやすいのは、このためです。
小麦の種類とコシ
うどんには「中力粉」が使われます。日清製粉グループによると、中力粉の原料は中間質小麦と軟質小麦で、強力粉と薄力粉の中間の性質をもつ小麦粉です。
香川県が開発した小麦「さぬきの夢」について、香川県は、オーストラリア産の小麦(ASW)に比べてグルテンの量がやや少ないため、コシを引き出す工夫が必要だと説明しています。後継の品種「さぬきの夢2009」は、「さぬきの夢2000」よりグルテンの量が多く、しなやかで弾力のあるコシをもつ品種です。2024 年には、グルテンの質が強い「さぬきの夢2023」が奨励品種に採用されています。
コシは数字でも測られている
コシは、食べた人の感覚だけでなく、機械でも測られています。前に挙げた三木さんの論文は、うどんの物性を測る方法として、破断試験、クリープ測定、応力緩和測定を挙げています。
実践女子大学の四宮陽子さんの研究(日本調理科学会誌、2000 年)は、麺をかみ切るまでの力の変化を機械で測り、ゆで麺のコシの変化を数値で表しました。機械で測った値は、人が食べて評価した結果とよく合っていたそうです。
コシが弱いことを良さとするうどんもある
コシがあるうどんが、いつもおいしいうどんとは限りません。コシの弱さを特徴にしている地域のうどんもあります。
- 伊勢うどん(三重県): 農林水産省の「うちの郷土料理」は、伊勢では昔から、のばす手間をかけずに「腰の無い太いうどん」を作ってきたと紹介しています。広報誌「aff」は、「もちもち」「ふわふわ」の食感で、コシがないのが特徴だと書いています。くわしくは伊勢うどんの記事で紹介しています。
- 博多うどん(福岡県): 「aff」の 2017 年 1 月号は、博多うどんを「ふわふわしたコシの弱い麺が特徴」と紹介しています。最近は、適度な弾力のある麺を出す店も増えているそうです。くわしくは博多うどんの記事で紹介しています。
- 宮崎のうどん: 宮崎市観光協会は、宮崎うどんの特徴を「コシの無い“やわらか麺”」と紹介しています。くわしくは宮崎の釜揚げうどんの記事で紹介しています。
一方で、稲庭うどんは、「aff」の 2016 年 7 月号で「しっかりしたコシとのどごしの良さが特徴」と紹介されています。コシの強さは、うどんの良し悪しではなく、地域ごとの個性です。
コシを記録する
一玉 うどんログでは、食べた一杯ごとに「コシ」を選んで記録できます。同じ店でも、ゆでたてかどうかでコシの感じ方は変わります。ゆでたてを食べたか、持ち帰って食べたかも書き留めておくと、コシの違いが見えてきます。
参考にした資料
- うどんのテクスチャー(三木英三、日本バイオレオロジー学会誌 20 巻 2 号、2006 年)
- 破断試験によるゆで麺のテクスチャーの特徴と官能評価との関係(四宮陽子、日本調理科学会誌 33 巻 2 号、2000 年)
- パンの食感、うどんのこし グルテニンとグリアジン(東京農業大学 教員コラム)
- さぬきの夢うどんの作り方・さぬきの夢2009 の特徴・「さぬきの夢2023」奨励品種採用(香川県)
- 讃岐うどん工場見学・手打ち体験(うどん県旅ネット、香川県観光協会)
- こむぎ粉くらぶ うどん・小麦・小麦粉の基礎知識(日清製粉グループ)
- うどんの味について(木下製粉)
- ニッポン麺探訪 伊勢うどん・稲庭うどん・水沢うどん・讃岐うどん・博多うどん(農林水産省 広報誌 aff)
- 伊勢うどん(農林水産省 うちの郷土料理)
- 辛麺だけじゃない!宮崎県民が朝にもシメにも食べる宮崎の「うどん」(宮崎市観光協会)
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一玉 うどんログで、食べたうどんを一玉ずつ記録できます



